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女狐復活

Rev It UpRev It Up
VIXEN

曲名リスト
1. Rev It Up
2. How Much Love
3. Love Is a Killer
4. Not a Minute Too Soon
5. Streets in Paradise
6. Hard 16
7. Bad Reputation
8. Fallen Hero
9. Only a Heartbeat Away
10. It Wouldn't Be Love
11. Wrecking Ball

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おれは女性Voモノのハードロック/プログレ/ポップスに目がなく、
「女子が歌っている」という事実だけで無条件にチェックしてしまうほどなのだが、
その中でも当然ながら好き嫌いはある。


一番苦手なのは女性Voを前面に押し出したメタルだ。
(なおデス・ヴォイスは「女性Vo」の対象外)


「メタルが好き」 「女性Voが好き」にも関わらず、
その両者が融合するといきなりキツくなる。


特にゴシックメタル系、あと最近流行りの嬢メタルが本当にダメ。
もう聴いてられない。


単純に曲がつまらない、というのもあるが、
女性の声とメタリックなリフは基本的に合わないと思うのだ。


まあこのへんは感覚的なものなのであくまで個人的な趣向にはなるが、
メタルの(特にヌルい)リフは女性Voの良さを台無しにしちゃいがちだと
おれは考えている。



たとえばアネク・ヴァン・ガースバーゲンはTHE GATHERINGにいた頃よりも
ソロに転向しデヴィン・タウンゼンドやジョン・ウェットンや
ANATHEMAの人とやってる時のパフォーマンスの方が断然良いし、

LACUNA COILもゴシックメタル期はクソつまんない音楽だったが
2009年の『SHALLOW LIFE』で売れ線歌ものヘヴィ・ロックに変貌し
いきなり素晴らしいバンドになった。

正直、クリスティーナ・スカビアにはさっさとLACUNA COILを脱退して
ソロ転向しもっとポップな音楽をやって欲しいと思っている。



そんなわけで女性Voメタルがまったくもってダメなおれだが、
女性Voハードロックは死ぬほど好きである。



そのボーダーラインはどこにあるのか。



思うにハード&ヘヴィ路線で一番カッコいいのは
80〜90年台におけるHEART、リタ・フォード、そしてVIXENのあたり。

このくらいのハードさが最も女性Voと共存できていると思う。



今日はそのVIXENについて。


VIXENはジャネット・ガードナー(Vo)、ジャン・クエネムンド(G)、
シェア・ペダーセン(B)、ロキシー・ペトルッチ(Dr)の4人により
1988年に『VIXEN』でデビュー。
(実はデビューに至るまで14年ほど歴史があるんだがそこは割愛)


ブームの流れでLAメタルバンドと捉えられがちだが、
LAメタルの大半のバンドがそれほどメタルじゃなかったように、
VIXENの音楽もメタルと言うよりアメリカン・ハードロックである。


いやむしろメロハーっぽいというか、
多分音楽的に一番近いのはBON JOVI。

すなわち曲が非常にポップ&キャッチー。



リチャード・マークスが作曲&プロデュース陣に名を連ねたデビュー作は
フロント3人の美貌が麗しいPVも制作された
"Edge of a Broken Heart" "Cryin'"をはじめとして
"One Night Alone" "Love Made Me"などなど、佳曲が目白押し。


リヴァーヴの強いスネアや、アルバムジャケ・PVのネオンサイン含め
80年代アメリカン・ハードにおける名盤だ。



だがそこそこ成功したものの、
1stは周りのバックアップ・お膳立てにより作られた感が否めない。


そこで外部要素を極力排し、バンドメンバーが主導権を握って制作されたのが
1990年の2nd『REV IT UP』である。


より自由に、そしてさらなる成功を目指し気合十分で作られたのだろう、
作風の焦点が絞られ、結果的に1stを凌駕する名盤に仕上がった。



捨て曲はほぼ無し。


脳天気な"Bad Reputation"と"Wrecking Bell"はちょっとかったるいが、
その他の9曲はいずれも単体でシングルカット可能なレベルの佳曲だ。



何よりメロディが最高。1曲1曲のクオリティが非常に重視されている。
ハードでありながらもアメリカンな哀愁が放たれている様が素晴らしい。


ジャネットのハスキーな高音もカッコいいし、
演奏面も元々巧い人たちなので(特にシェアは元ベース講師だし)
派手さは無いもののまったく問題無い。


個人的には80〜90sにおけるアメリカンハード/メタルにおいて
5本の指に入る頻度で聴きまくっているアルバムだ。



…しかしこれだけの充実作でありながら、
プロモーションが悪かったのかなんなのか、セールス的にはなぜか惨敗。

なんと発売して間もなくEMIから首を切られてしまう。
そしてそのままVIXENは解散してしまった。



その後、ジャネット&ロキシーに新G&Bを加え再結成、
1998年に3rd『TANGERINE』を発表するも、
これは駄作以外の何物でもなかった。


バンドは再び解散。



2001年、今度はギターのジャンも加わり再始動。

…が、これも長続きせず、ジャネットとロキシーが脱退。



以降、VIXENはジャン・クエネムンドが新メンバーを率いるかたちで
現在も細々と活動を続けている。



ちなみにベースのシェア・ペダーセンは91年のVIXEN解散後、
DOGS D'AMOURのバムと結婚。

バムと共にパンクバンドBUBBLEを結成し
自身はベースからVo&ギターに転向。マイペースで活動を続けていた。


BUBBLEのアルバム『ROCKETS & VOLCANOES』は
日本盤が出ていたのでおれも買ったが(確か2001年頃)、
シェアの超渋いVoを中心に据えた哀愁ガレージロックンロールで、
名作とは言えないまでも点数としては75点は献上できる内容だった。



なお全盛期のVIXENについては2004年、
VH1による「一夜限りの再結成」企画が実現しており、
Youtubeでもその時のライヴを観ることができる。


映像を観る限りはそんなに仲悪そうな感じでもなかったが、
まあ色々あるらしく結局再結成は本当に「一夜限り」で終わってしまった。


かつてのゴージャスで美麗なVIXENを拝むことはもうできないのか…。



と悲嘆に暮れていたVIXENファン(おれだけか)の元に
昨年、ビッグニュースが飛び込む。


なんとジャンを除く
ジャネット+シェア+ロキシーが新バンド結成!
(ギターには97〜98年にてVIXENに在籍したジーナ・スタイル)

これはもうほぼVIXEN、おれたちのVIXENではないか!



特に1991年以降、正式な復帰を拒み続けてきたシェアが
まだジャネットと一緒にやる気になってくれたことがうれしい。


そういえば『REV IT UP』も、
ジャネット&シェアのコンビで作曲されたものが多かった。
否が応にも期待は高まる。


なおバンド名には当初"VIXEN"が含まれていたが、
如何せんジャン・クエネムンドがバンド名の権利を所有している
(うえに、実際今もVIXENとして継続活動している)
こともあり、JSRGと改名。



現在絶賛レコーディング中とのことである。



ジャネットそしてシェアは、さすがにおばちゃんになったものの
まだまだゴージャスさは失われていない。
(正直おれはこの2人がいればギターとドラムは別に誰でもいい)



『REV IT UP』級の良質メロハーチューンが詰まったアルバムを
作ってくれることを、密かに楽しみにしている今日このごろなのであった。

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幻想への回帰

FireflyFirefly
URIAH HEEP

曲名リスト
1. The Hanging Tree
2. Been Away Too Long
3. Who Needs Me
4. Wise Man
5. Do You Know
6. Rollin' On
7. Sympathy
8. Firefly

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Innocent VictimInnocent Victim
URIAH HEEP

曲名リスト
1. Keep on Ridin'
2. Flyin' High
3. Roller
4. Free 'n' Easy
5. Illusion
6. Free Me
7. Cheat 'n' Lie
8. The Dance
9. Choices

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70'sブリティッシュハードロックというのは、
そのジャンルから想起される保守的なイメージとは裏腹に、
けっこうテキトーなバンドが多い。


どれでもいいが、ある一つのバンドの作品を
1stから順番に聴いていくと、途中でアメリカナイズされたり
ものの見事に迷走を始めたりと、大英帝国のプライドはどこへやら、
という感じで軸がブレブレのバンドが多いことに気がつく。



軸をぶらさずに「変化」をうまいかたちでやり遂げたのは
それこそZEPやBLACK SABBATHだけなんじゃないかと思うし、


そういう歴史的な流れを踏まえて考えると
"Defenders of the Faith"と自ら退路を無くしたJUDAS PRIESTや
頑固一徹スティーヴ・ハリス率いるIRON MAIDENの
特異性が際立ってくる…というのもあるがそれはまた別のお話。



今日はURIAH HEEPを取り上げてみたい。



URIAH HEEP(というかケン・ヘンズレー)は、
誤解を恐れず言うと、非常にテキトーでいい加減で
時代に流されやすいバンドである。


一般的に有名なのは3rd『LOOK AT YOURSELF』を筆頭に
4th『DEMONS & WIZARDS』、5th『THE MAGICIAN'S BIRTHDAY』
あたりであり、これらのアルバムでURIAH HEEPは
「濃厚で大仰でコンセプチュアルな大英帝国ハードロック」を作り上げた。


URIAH HEEPの全盛期はこの時期、という意見はまったく間違ってないし
疑いようの無い事実だ。


なぜなら5th後に出したライヴ盤を最後に、
このバンドはひたすら迷走の一途を辿るからである。



6th『SWEET FREEDOM』(73年)や7th『UNDERWORLD』(74年)は
あのファンタジックな世界観は何処に…と思わず言いたくなる
アメリカナイズされまくったハードロックだが、
これは4thや5thがアメリカでそこそこ売れてしまったのが原因だろう。


同時代の他バンド同様、アメリカという市場のでかさに
欲が出てしまったのもまあしょうがない。


努力の甲斐あって6thや7thはアメリカでもヒットしたようだが、
ここで「よし!この路線を突き詰めよう!」とならないところに
URIAH HEEPというバンドの意志の弱さがある。



「やっぱり昔の方向性に戻ったほうが…」と思ったのかどうかは知らんが、
バンドは突如ベースにジョン・ウェットンを加入させ、
再び重厚な音楽性に満ちた8th『RETURN TO FANTASY』を発表。


ウェットンはベースに専念しており歌っていないが、
全盛期を思わせるなかなかの良作に仕上がっており、
実際英国では一番売れたアルバムらしい。



…が、当然アメリカでは大不評。まったく売れなかった。



ここでまたもや迷いが生じるURIAH HEEP。
まったくこのバンドは…。


続く9th『HIGH AND MIGHTY』は
またまたアメリカを意識したポップで単調な曲のオンパレード。

大仰な歌唱が持ち味のデイヴィッド・バイロンが邪魔になったのか、
しょっぱなの曲をウェットンに歌わせているのも象徴的だ。



そして9th後、バイロンはついに解雇されてしまうわけだが、
なんとここでウェットンまでもU.K.結成画策のため脱退。


新たなヴォーカルを探さざるを得なくなったURIAH HEEP。



ポール・ロジャース、イアン・ギラン、ロバート・プラント、
はたまたオジー・オズボーンにまで声をかけたと言われており、
まったくもって節操が無いというか迷走極まりない。

ちょうどDEEP PURPLEが解散してやることが無かった
デイヴィッド・カヴァデールは実際オーディションで歌ったらしいが、
結局WHITESNAKE結成の道を選びHEEP加入の話は立ち消え。



そしてようやく見つかったのが、
LUCIFER'S FRIENDにいたジョン・ロートンである。



ジョン・ロートンの歌唱力は素晴らしい。

LUCIFER'S FRIENDの1stや2ndでも最高のVoを堪能できるが、
パワフルかつ、情感たっぷりの曲/シンプルなハードロックどちらも
歌いこなせるロートンはまさにうってつけの人材。


ちなみに2004年に高田馬場でURIAH HEEPイベントが行われた際
ジョン・ロートンがゲストで来日したことがあり、
当時ロートンにハマっていたおれも観に行ったんだが、
生で聴く迫力はすさまじかった。


経歴が地味なのであまり有名じゃないが、
間違い無く英国ロック史上に残る名ヴォーカリストだと思う。



さて、新たな武器を得たURIAH HEEPは
再び(何度目?)往年の音楽性を復活させ77年に『FIREFLY』を発表。


ケン・ヘンズレーがほぼ全曲を手がけたこのアルバム、
昔ほどの湿り気は無いものの、ロートンの歌唱を活かした良作となった。

特に7曲目の"Sympathy"はHEEP5指に入る名曲だ。



だがしかし。ここですんなりいかないのがURIAH HEEPである。

なぜかケン・ヘンズレーはアメリカへの再挑戦を意識。


続く11th『INNOCENT VICTIM』ではまたしても
コンパクトな曲調が主体となっている。


が、『INNOCENT VICTIM』は、コンパクトではあるものの
ラストの"Choices"で聴かれるように往年の音楽性もまだ残っており、
むしろそのバランスが結果的に絶妙な混ざり具合となった
隠れた名作なのでこれはぜひ聴いてみてほしい。


ジョン・ロートンの実力がわかるという点では
『FIREFLY』より『INNOCENT VICTIM』の方が良いかもしれない。



新参のロートンが英国ハードロックの持ち味を守る一方、
ますますアメリカへ傾倒していくHEEPとケン・ヘンズレー。


ついにロートンも嫌気が差し、
12th『FALLEN ANGEL』発表後に脱退してしまった。




…という感じで70年台を迷走し続けたURIAH HEEP。


バンド名も有名、かつアルバム数も多いのに
イマイチ認知度が足りない原因はまさにここにあると言ってもいい。



おすすめするなら3rd〜5thだし、
正直それだけ聴いときゃいいんじゃないかと個人的にも思うが、

上記の歴史を踏まえた上で『FIREFLY』 『INNOCENT VICTIM』を聴くと
ジョン・ロートンの孤軍奮闘っぷりが
より一層味わい深いものになるのでその意味ではおもしろいアルバムだ。



なにより、URIAH HEEPという視点ではなく
ジョン・ロートンの絶品Voを楽しむ、という観点で聴くと
この2つの作品は十分に名盤と言えるのである。


5つの原子の季節

Springtime in NagasakiSpringtime in Nagasaki
TANGERINE DREAM

曲名リスト
1. Navel of Light
2. Persistence of Memory

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Summer in NagasakiSummer in Nagasaki
TANGERINE DREAM

曲名リスト
1. Climbing Mount Inasa
2. In the Cherry Blossom Hills
3. Mystery of Life and Death
4. Dreaming in a Kyoto Train
5. Ayumi's Butterflies
6. Presentiment
7. 11:02 AM

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Autumn in HiroshimaAutumn in Hiroshima
TANGERINE DREAM

曲名リスト
1. Trauma
2. Reset
3. Awareness (1st Teaching)
4. Novice (2nd Teaching)
5. Strange Voices
6. Fathom (3rd Teaching)
7. Oracular World (4th Teaching)
8. Remembering Ayumi
9. Mellow Submersion (5th Teaching)
10. Answers (6th Teaching)
11. Touching Truth
12. Insight (7th Teaching)
13. Omniscience (8th Teaching)
14. Nothing and All

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Winter in HiroshimaWinter in Hiroshima
TANGERINE DREAM

曲名リスト
1. Transition
2. Ayumi's Loom
3. Outlook
4. Togetherness
5. Echo of Light
6. Key Moment
7. Insiders
8. Nexuses
9. Glowing Vision

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Endless SeasonThe Endless Season
TANGERINE DREAM

曲名リスト
1. Flashback
2. Devotion
3. Virtue of Hope
4. Escape
5. The Seven Barriers
6. Logic of Intuition
7. Shunyata
8. Restless Mind
9. Wild Ocean of Blue Fate
10. Breaching Sky
11. Morphing

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TANGERINE DREAMの全作品をコンプリートするのは至難の業だ。


なにしろスタジオ盤だけで90枚以上、
コンピレーションやサウンドトラックやEP等も含めると
作品総数は250枚以上にも及ぶ。


フランク・ザッパやMERZBOWに匹敵するとんでもない量である。
まさにコレクター泣かせ。



そんな超精力的グループだが、やはり有名なのは70年台の作品群、
特にデビュー作の『ELECTRONIC MEDITATION』や
いわゆる「Virginイヤーズ」と呼ばれる時期における
『PHAEDRA』 『RUBYCON』 『RICOCHET』
『STRATOSFEAR』 『TANGRAM』あたりだろう。


これらの作品でテクノ/アンビエント/エレクトロニカの
始祖としての地位を確立したTANGERINE DREAMだが、

一方80年台以降のアルバムについては、
いかんせんリリース数が多すぎる&入手方法がよくわからない、

かつ音楽的にもオールドファンからは
「大味すぎる」 「混沌さが無くなった」 「単なるBGM」と
あまり評価が芳しくない。



だがしかし、初期への思い入れがそれほど強くないおれは言いたい。

80's、90's、00's、10'sのTANGERINE DREAMにも
聴き応えのあるアルバムはいっぱいある、と。



その中で今回取り上げるのが、
2007年から2010年にて5枚に渡る連作として発表された
"The Five Atomic Seasons"シリーズ。


『KYOTO』や『IZU』といったタイトルのアルバムを発表したり
自らのレーベル名を「Eastgate」と名付けるなど
TANGERINE DREAM(というかエドガー・フローゼ)は
日本に対する思い入れが強い。



同じく日本をテーマとしたこの連作。

"The Five Atomic Seasons"というシリーズ名、
そして舞台が長崎・広島であることから、
そのコンセプトは明らかだ。



これは実在の原爆被害者をモデルにした1945年の悲劇である。



ストレートなアルバムタイトルが表す通り、
「長崎・春」 「長崎・夏」 「広島・秋」 「広島・冬」と
四季を順番に描き、そして最後は「終わりなき季節」。



シーケンサーのリズムをバックにゆったりとシンセメロディが流れる
インストゥルメンタル、という点は5作品に共通している。

が、単に心象風景を映し出しただけのBGMには留まらない、
確固とした物語がここにある。



1作目の『SPRINGTIME IN NAGASAKI』からしていきなり濃厚だ。


基本的には悲劇が訪れる前の平和な春が強調され、
終盤はヴィヴァルディの「春」を交えつつ爽やかな曲調となるのだが、
一方で曲タイトルは「爆心地」と「記憶の残像」。

中盤の展開と相まって、不吉な予感をもはらんでいる。



2作目の『SUMMER IN NAGASAKI』。

"運命の日"を描いたアルバムなだけに、
緊張感・クオリティともに圧巻の名盤だ。


恋人アユミとの思い出、いつもと変わらぬ夏、
待ち受ける悲劇、そして1945年8月9日午前11時2分。


特に、"その時"をテーマとした
ラストの"11:02 AM"は凄まじい。

淡々と、かつ静かな緊張感をもって進行するシーケンス。


そして原爆投下の瞬間、
最後の時が止まるような演出には本当に鳥肌が立つ。



季節は秋へ。そして舞台は広島へ。



3作目『AUTUMN IN HIROSHIMA』はシリーズ中最も重い。


絶望と空虚にまみれた"Trauma"、レクイエムの"Awareness"、
悟りの"Omniscience"。


この世の地獄を生き延び、新たな人生への一歩が描かれる
このアルバムは、非常にヘヴィで、美しく、力強い。



『WINTER IN HIROSHIMA』 『THE ENDLESS SEASON』は
音楽的に少し趣が変わってくるが、
季節の総括・物語の総括的な役割を果たすこれまた良作であり、
特に『THE ENDLESS SEASON』でフィーチャーされた
ギターメロディは白眉。



日本をテーマとした外国音楽作品は数あれど、
「いかにも和」な安っぽいメロディを一切使うこと無く
日本を表現しきっているところに、
エドガー・フローゼのさすがの力量を感じる。



テーマがテーマなだけに5作通して聴いてほしいと思うが、
少なくとも最初の3枚「春」「夏」「秋」は
一聴するに値する名盤だと自信をもっておすすめしたい。


Welcome to My FUCKING Life

SixxAM7.jpeg

7
SIXX: A.M.

曲名リスト
1. Lies of the Beautiful People (Acoustic)
2. This Is Gonna Hurt (Acoustic)
3. Life Is Beautiful (Acoustic)
4. Help Is on the Way (Acoustic)
5. Sure Feels Right (Acoustic)
6. Pray for Me (Acoustic)
7. Accidents Can Happen (Acoustic)



SIXX: A.M.は素晴らしい。
サイドプロジェクトだからと言ってなめちゃいけない。


そもそもの結成のきっかけが
「ニッキー・シックスの自伝内容に合わせたアルバムを作る」だった上に
ニッキーはMÖTLEY CRÜEを、DJアシュバはGUNS N' ROSESを
それぞれ優先させると公言してるし、
ジェイムズ・マイケルもプロデューサーとしての本業があるので
完全にマイペース課外活動バンドになってるが、

それがもったいないと感じられるほど
1st『THE HEROIN DIARIES SOUNDTRACK』、
2nd『THIS IS GONNA HURT』ともにクオリティの高い傑作であった。



特に2ndの充実感はすさまじく、
間違い無く現代アメリカンハードロックにおける名盤だ。



だがアルバムとしての評価もさることながら、
「名作曲家ニッキー・シックスの復活」、そして
「THE 内助の功、ジェイムズ・マイケル(とDJアシュバ)の発見」に
このプロジェクト最大の意義があることを見逃してはならない。



おれはMÖTLEY CRÜEマニアだが、
正直MÖTLEYにおける「作曲家ニッキー・シックス」の頂点は
1994年の『MOTLEY CRUE』だったと思っている(いた)。


ジョン・コラビ在籍時の黒歴史として迷盤扱いされる『MOTLEY CRUE』。

だが後の『GENERATION SWINE』や『NEW TATTOO』より
遥かに曲の出来はいいし、名盤とされる『DR. FEELGOOD』すら
正直上回っている…という話は昔書いた


これはニッキー自身の作曲能力の枯渇、という問題だけでは無く、
(病魔に侵されおそらく作曲どころではなかった)ミック・マーズの不調、
にも原因があると思う。



ニッキー・シックスが稀代のソングライターたるためには、
パートナーとなる人物が常に鍵を握っている。



MÖTLEY CRÜEにおいてミック・マーズという男は、
単にギタリストという役割だけではなく
"バンドの頭脳"ニッキーに指針を与える存在として非常に重要なのである。


ヴィンス・ニールやトミー・リーがMÖTLEY CRÜEを抜けると言っても
ニッキーは最終的には了承するだろうが(実際に解雇/脱退したし)、
ミックの離脱だけは何があっても絶対に阻止するだろう。


それだけ重要な存在であるパートナーの不調が、
『GENERATION SWINE』や『NEW TATTOO』がパッとしなかった
原因をもたらしたのではないかと思うのだ。
(個人的にはどっちも嫌いじゃないけど)



ニッキーが2002年に結成したBRIDES OF DESTRUCTIONにおいては、
パートナーとなったのはトレイシー・ガンズであった。


ニッキー在籍時に唯一残したアルバム『HERE COME THE BRIDES』は、
悪くはないがちょっと淡白な感も否めない内容で、
これはトレイシーの出自がメタルというよりパンクスだったという点が
響いている、とおれは思う。



すなわちニッキーの作曲センスを最大限に活かすには
「誰が相棒か」が極めて重要なポイントであり、
その役割を完璧にこなしているのが、
まさしくジェイムズ・マイケルとDJアシュバなのだ。



事実、2007年にSIXX: A.M.の1stを発表した後、
手応えを感じたニッキーはMÖTLEY CRÜEの再結成アルバム制作にあたり
作曲陣としてこの二人を参加させており、結果、
完成した『SAINTS OF LOS ANGELS』はMÖTLEY起死回生の良作となった。
(ジェイムズとDJは全曲にクレジット!)


※実は2000年の『NEW TATTOO』においてすでに
 ジェイムズの名前が11曲中6曲でクレジットされてたりする。
 …が、その時点ではまだ手探り感が強くそれほど充実感は無い。



そして当初は単発プロジェクトに終わるかと思われた
SIXX: A.M.も活動を継続、2011年に2ndを発表した後、
同年にこのミニ・アコースティックアルバム『7』を制作した。



ニッキーの"素晴らしき女房"の一人ジェイムズ・マイケルだが、
SIXX: A.M.最大の魅力はこの人にあるといっても過言ではないほどで、

超イケメンな上に歌もめちゃくちゃ上手く声もカッコいい、という
(なんであんたプロデューサー業とかやってんだよ!)と
思わずツッコみたくなるぐらいの才能の持ち主。


アメリカン・ハードロックのカッコよさを一手に引き受けたような男だ。


で、この『7』だが、まさにジェイムズの素晴らしさを堪能するために
作られたような最高の出来。


1stからの3曲+2ndからの4曲をアコースティックverで
セルフカヴァーした内容の本作だが、
そもそもの曲自体がキャッチーでコンパクトであることに加え
「歌モノとしてのクオリティ」を意識して作られていることもあり、
それがVoを最大限に活かすかたちでアレンジされているのだから
駄作になるはずがない。


とても「つなぎの1枚」とは思えないカタルシスを与えてくれるし、
曲の良さを改めて痛感する作品だ。


1曲だけ音源を貼っておくので、これを聴いて気に入った人は
1stや2ndと併せてゲットしても絶対に損はないはず。





なおこのアルバム、おれはiTunesで買ったんだが、
他の購入ルートがあるのかどうかは不明。


Amazonで検索しても出てこないとこをみると、
ダウンロード販売のみの形態かもしれない。



ともかく現在鋭意制作中と伝えられる3rdが非常に楽しみだ。



そしてMÖTLEY CRÜEの次作については…

たぶんニッキーは再びジェイムズ&DJを作曲陣として招聘するだろうが、
なにより"ギタートーンの求道者"ミック・マーズがパートナーとして
往年の輝きを取り戻すことができるかどうか、にかかっている。



Sixx & Marsの名ソングライターコンビ復活に期待したい。


東欧新世代プログレへの誘い

Shrine of New Generation Slaves : Limited Edition (2CD)Shrine of New Generation Slaves
RIVERSIDE

曲名リスト
1. New Generation Slave
2. The Depth of Self-Delusion
3. Celebrity Touch
4. We Got Used to Us
5. Feel Like Falling
6. Deprived (Irretrievably Lost Imagination)
7. Escalator Shrine
8. Coda

Bonus Disc
1. Night Session Part One
2. Night Session Part Two

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ポーランドのRIVERSIDEは2003年に『OUT OF MYSELF』でデビュー。

その後2005年の2nd『SECOND LIFE SYNDROME』、
2007年の3rd『RAPID EYE MOVEMENT』、
2009年の4th『ANNO DOMINI HIGH DEFINITION』と
コンスタントに活動を続けているプログレッシヴ・ロック・バンドだ。


PORCUPINE TREE以降のいわゆる新世代プログレ(Inside Out/Kscope系)の中では
知名度・実力ともに群を抜いている存在。



そのRIVERSIDEが先日発表した5枚目のアルバムが、この
『SHRINE OF NEW GENERATION SLAVES』である。



1st『OUT OF MYSELF』は、陰鬱な世界観を主眼に置きながらも
ハードロック的な味わいを基調にしているところが
他バンドとは一線を画しており、なかなか魅力的な名盤だった。


続く2ndではハードロック要素をよりヘヴィな方向で押し出し、
メタリックなリフを中心に据えた、
(あまりこの言葉は好きではないが)「プログレ・メタル」として発表。


リフ展開面でOPETH、あるいはDREAM THEATER的な方法論を取りながらも
東欧らしい「突き抜けなさ」が個性としてうまく機能していて
おれは結構好きなアルバムなんだが、
一方でzitaくんが指摘しているように「ヘヴィすぎる」という意見もよく分かる。



その後3rdではやや落ち着きを見せハードロック的な雰囲気に一時戻るも、
4thでは再び2nd同様メタリックリフを追求…という遍歴を経て、
今回の新譜。



結論から言うと、メタル要素を極力封印、
より叙情的な雰囲気をフィーチャーした作品になっている。

1st・3rdの路線をより深化させた内容、と言えるんじゃなかろうか。



2ndや4thのような音は割と分かりやすいし即効性という意味では強いが、
そういうメタル路線を無理に推し進めようとしない、
バンドとしてのバランス感覚が素晴らしい。


4曲目"We Got Used to Us"で特に顕著な、
隙間のある叙情・哀愁メロディは絶品だ。

マリウス・デューダの、スティーヴン・ウィルソンを彷彿とさせる
美麗Voも相変わらず最高。



また、メタル要素を潜めているとはいえ退屈な感じにはまったくなっておらず、
1曲目冒頭でのリフはつかみとしては十分なほどインパクトあり。


オルガンの効果的な使用等、ハードロックな音はうまく残しているので
2ndや4thを聴いて好きになった人にも問題無くおすすめできる。



ハイライトは長尺の7曲目"Escalator Shrine"。


4分50秒あたりでオルガンが入ってきてからの
URIAH HEEP/DEEP PURPLE的な流れがめちゃくちゃカッコいいが、
そこからPINK FLOYDの"Brain Damage" "Eclipse"を想起させるメロディへ
展開させているところがお見事。



本年度ベストアルバムの上位候補となりうるレベルの良作だ。



なお2枚組限定盤にはボーナストラックとして
"Night Session Part One" "Night Session Part Two"の2曲を収録。

初期PORCUPINE TREE(『THE SKY MOVES SIDEWAYS』あたり)色が濃厚な、
アンビエントでダークなムードにどっぷり浸れる佳曲。

今から買う人はぜひ限定盤をゲットしてほしい。




で、そろそろライヴも観てみたいのだが…。

戦慄の王女

イニュエンドウ(リミテッド・エディション)Innuendo
QUEEN

曲名リスト
1. Innuendo
2. I'm Going Slightly Mad
3. Headlong
4. I Can't Live With You
5. Don't Try So Hard
6. Ride the Wild Wind
7. All God's People
8. These Are the Days of Our Lives
9. Delilah
10. The Hitman
11. Bijou
12. The Show Must Go On

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おれにとって本格的なハードロック/メタルの入口は
小学校6年の時に聴いたVAN HALENだったが、
洋楽ロックの入口は小学校4年の時におかんから聴かされたQUEENであった。


そんなわけでQUEENに対しては割と思い入れが強いんだけど、
最高傑作を一枚選べと言われたら間違いなく『INNUENDO』を挙げる。



「QUEEN最高傑作」を巡る議論については
『QUEEN II』と『A NIGHT AT THE OPERA』が二強だろうし
それに異を挟むつもりは毛頭ございませんが、
おれは『INNUENDO』こそ完璧たる究極の様式美作品だと思っている。



このアルバムの扱いが難しいのは
「発表10ヶ月後に亡くなったフレディ・マーキュリー」という事実が
感傷的な側面として混ざり込み客観的な評価をしにくい、という点だ…

というのはよく言われるが、
『INNUENDO』は「遺作」前提で評価をしても許される、
いやむしろ「遺作」として接するからこその傑作ではなかろうか。



"Innuendo" "Don't Try So Hard" "The Show Must Go On"の
凄絶な悲壮感、

"These Are the Days of Our Lives" "Bijou"の穏やかな幻想感覚、

アップテンポでキャッチーな"Headlong"や"Riding the Wild WInd"
にさえも漂う切なさ…



全曲が「最終作」にふさわしい美しさを湛えている。


まあQUEENについてはいまさらおれなんぞが言うことも無いほど
語り尽くされているので多くは書きませんが、
これだけ完成度が高く、説得力をもったアルバムは他に無い。



映画でも文学でも、一番重要なのは「結末」。
すなわち「どう締めるか」である。



女王は誰も及ぶことのできない完璧な「最期」を飾った。
だからこそ「史上最も偉大なバンドの一つ」なのだ。

幻影の寓話

Passion (CD+DVD)Passion
PENDRAGON

曲名リスト
1. Passion
2. Empathy
3. Feeding Frenzy
4. This Green and Pleasant Land
5. It's Just a Matter of Not Getting Caught
6. Skara Brae
7. Your Black Heart

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二つ前の記事
「MARILLIONは25年前の時点ですでにポンプ・ロックではない」
的なことを書いた。


一方、MARILLIONとほぼ同時期にデビューし、いまだに一貫して
ポンプ・ロック、シンフォニック・プログレを奏で続けているバンドがいる。


それがPENDRAGONだ。



1985年のデビュー以降現在に至るまで、
PENDRAGONの音楽は基本的に変わらない。


美旋律メロディにきらびやかなキーボードと泣きのギター。



『THE WORLD』 『THE WINDOW OF LIFE』
『THE MASQUERADE OVERTURE』 『NOT OF THIS WORLD』の
超ファンタジックなアルバムジャケットも相まって、
まさに「THE・シンフォプログレ」な王道ど真ん中である。



メンバーに関しても、ドラマーが何度か交代してはいるものの、
ニック・バレット(Vo・G)、クライヴ・ノーラン(Key)、
ピーター・ジー(B)は不動のラインナップ。



ニック・バレットのVoは、はっきり言ってヘタだ。
音域は決して広くないし、どちらかっつーと線は細く、
特段深みがあるわけでもない。


さらに鞭打つならこのバンド、ルックスが絶望的にダサい。
アーティスト写真だけ見るとフツーの冴えないおっさんである。



なんとなくそのあたりが"キャリアの割にいまだB級感が拭えない"
理由だったりするんじゃないかと個人的には思うんだが、
だがしかし、それを補って余りあるほど生み出す音楽は素晴らしく、
ニックのギター含め演奏陣のクオリティも抜群なのだ。



『PASSION』は2011年に発表された現時点での最新作。


穏やかで柔らかく、包み込むような美麗メロディ…
という基本路線はそのままに、2005年の『BELIEVE』以降少しずつ
ヘヴィな要素を取り入れているPENDRAGON。

本作でもハード/ヘヴィ要素をフィーチャーしており、
1曲目イントロの時点でそれを感じることができる。



PENDRAGONがすごいのは、ハードネス/ヘヴィネスと
美麗メロディとの共存のさせ方がとにかく上手いという点だ。


ど頭の"Passion"ですでに顕著に現れているが、
ダークな緊張感によりメロディをスポイルしてしまうこと無く、
逆にその緊張感をコントラストとして利用し
曲のメリハリとして活かしているところが実に素晴らしい。


結果的にこのアルバムは、
PENDRAGON史上最もドラマティックな作品になっていると思う。



特に4曲目、"This Green and Pleasant Land"は
本作の頂点にしてハイライト。

13分以上ある大作だが、終始泣き続けるギターや
ニックの歌メロ等、感動を禁じ得ない名曲。


爆発的に売れることは無くても継続して良作を生み出し続けてきた、
ベテランならでは円熟味と曲作りの巧さが感じられる。



PENDRAGONのほぼすべての曲の作詞作曲は
ニック・バレットによるもの。

この人は名ソングライターとして
今こそちゃんと評価されるべきおっさんだ。




あまりにベタベタなシンフォニック・プログレゆえ
なんとなく敬遠されがちなバンドだが、
聴かず嫌いのままにしておくのはもったいないのでぜひご一聴を。


そして「こういうのはクドすぎてあまり好きじゃない」って人も、
本作の絶妙な洗練具合・ヘヴィネスの混ぜ具合は
見直すに値する出来だと思うので、もう一度チャレンジしていただきたい。


上記の"This Green and Pleasant Land"や、
『BELIEVE』収録の"The Wishing Well - b. Sou' by Sou'west"、

『NOT OF THIS WORLD』に収録されている
"Dance of the Seven Veils Part 2: All Over Now"あたりは
珠玉のメロディが胸を打つ、実に感動的な名曲でございます。



シンフォニック・プログレとは?という問いに対する最も明快な回答。

それが「PENDRAGON」である。


前衛とは何か

内省(紙ジャケット仕様)Introspezione
OPUS AVANTRA

曲名リスト
1. Introspezione
2. Les Plaisirs Sont Deux
3. La Marmellata
4. L'altalena
5. Monologo
6. Il Pavone
7. Ah... Douleur!
8. Delie'e
9. Oro
10. Rituale

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Avantgarde+Trad=Avantra

だそうです。


1974年に発表された本作は、数あるプログレガイド本やWebサイト等で
必ずと言っていいほど掲載され、
「イタリア史上に残る絶対必聴の名盤」として扱われている作品。

ご多分に漏れずおれもプログレかじり始めの頃に購入。


聴いた時の感想は…



(わ、わかんねえ…)


このアルバム、メタル上がりの人間には正直めちゃめちゃ難解だと思う。


おもいっきりノイズミュージックなピアノとSEだけで構成される1曲目、
ピアノ+管弦楽器とオペラチックな女性Voの歌唱+語りの2曲目、
幼稚園のお遊戯会的な合唱を導入として、フルートとVoの偏執的なユニゾンが
繰り返される3曲目…と、

いわゆる「プログレ」だと思って聴くとわけがわからない。


これはプログレっつーよりも完全にチェンバーミュージック、
室内楽の範疇に入る音楽である。


思いつきで例えるなら、J.A.シーザーがDEVIL DOLLに加入して
KING CRIMSONの『ISLANDS』をやっている、みたいな。

すさまじく前衛的。ぶっちゃけロックですら無いと思う。



そしてこのバンド、実は2008年にクラブチッタで来日公演を行なっている。
おれも観に行きました。

ライヴを観た感想は…


(わ、わかんねえ…)


どぎつい色のドレスを着て歌うVoのドネラ・デル・モナコ、
ところどころで語りを入れてくる、黒装束+仮面を着用した
怪しいおっさん(ミュージシャンじゃないらしい)、
踊る弦楽四重奏団…といった感じで、スタジオ盤に拍車をかけて難解な有様。

ライヴというより前衛アングラオペラを観ているような感覚だった。


(ああ、うん……な、なるほどね…)って感じ。



何がどう「イタリアの至宝」とされているのかはいまだに理解できてないんだが、
とりあえずインパクトが強烈なのは確か。



…で、おれはここまで何度か「前衛」という単語を使っている。

そして「前衛音楽」「前衛芸術」というフレーズはごく一般的な単語として
世の中に認知されてもいる。



この単語、聴く側にとっては非常に便利なことばだよね。


ザッパでもFANTOMASでもLIGHTNING BOLTでも非常階段でも
THE MARS VOLTAでも何でもいいんだけど、
カテゴライズしにくい音楽はとりあえず「前衛的」「アヴァンギャルド」って
言っておけば間違いないみたいなとこある。



そしてたぶん、音楽を演る側にとっても、これは便利な単語だと思う。


「ジャンルに縛られない」ことを信条とし、他者との差別化を図るバンドにとって、
「前衛音楽」「アヴァンギャルドミュージック」というカテゴライズは
最も受け入れやすいジャンル分けだろうな、と。



だがそれは本当に「前衛的」だと言えるのか?



いわゆる脱構築的な言い方をするならば、
「前衛」というカテゴライズをされた瞬間にそれは前衛では無くなるし、
さらに「前衛音楽」ということばに対して多くの人が
「それがどんな音楽か」をなんとなくイメージできてしまう時点で、
「前衛音楽」というジャンルの前衛性・革新性は消え失せてしまっている。


※このあたり、「プログレ」というジャンルに求められるのは
実はプログレッシヴすることでは無い、という事象との類似性を想起させるが、
それはまた少し別のお話。



既存の型からの脱却を目指し「前衛的」であることを求めた結果、
「前衛」になった瞬間にそれは前衛でなくなる…。


ある意味悲しいジレンマだが、
あらゆる創作物は模倣により生まれるという原理原則の上に立つならば、
「真の意味での前衛は存在しない」というのは至って自明の結論とも言える。


重音激音界において最も「前衛的」と認識されている
ノイズミュージックにしても、いまや体系化されたジャンルと言っていいと思う。
言ってしまえばそれは"ノイズを出す"、という一ジャンルなのだから。


数年前に英国旅行に行った際、とある美術館で
「The History of Noise Music」という書籍を見つけたことがあるが、
そういう風に整理される対象になっている時点で、
体系に組み込まれているのは明らかではないだろうか。



では、この如何ともし難い矛盾から逃れるにはどうすればいいのか。

先鋭化をひたすら突き進めれば
果たして「前衛」が持つジレンマから脱却できるのか?

あるいはどこまでいっても矛盾にとらわれたままなのか?


その意味で、逆転の発想、すなわち「アヴァンギャルド」の対極にあり、
ゴリゴリの保守性を感じさせる"Trad"という単語をあえて組み合わせた上で
バンド名に冠したOPUS AVANTRAは一つの解だと言えるかもしれない。



そんなことを考えながら聴いてみるのもまた一興。


…と思って改めてアルバム聴き返してみたが、


やっぱりわかんねえ……


Hoping... dare we dream?

Sound That Can't Be MadeSounds That Can't Be Made
MARILLION

曲名リスト
1. Gaza
2. Sounds That Can't Be Made
3. Pour My Love
4. Power
5. Montreal
6. Invisible Link
7. Lucky Man
8. The Sky Above the Rain

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日本におけるMARILLIONというバンドの立ち位置となると、いまだに
「ネオ・プログレ」「ポンプ・ロック」「GENESISフォロワー」
という認識をされていることが多いように感じる。


確かにフィッシュがフロントマンだった初期の頃は
上記形容が当てはまるかもしれないが、でももういい加減、
扱いを見直されるべきなんじゃなかろうか。



フィッシュがVoとしてMARILLIONに在籍した期間は
1983年〜1988年の約5年、発表したスタジオアルバムは4枚。

フィッシュ脱退後、スティーヴ・ホガースの加入と共に
MARILLIONの音楽性はガラッと変わる。


ポンプ・ロックとはとても表現できない、ましてやGENESISとも似ていない、
ヘタすると「プログレ」というカテゴライズ自体も合わないんじゃないか
っつーぐらいのPINK FLOYD的な繊細で穏やかで陰のある世界観。


ホガース加入以降、MARILLIONが発表したスタジオ盤は13枚。
彼は今年で在籍25年目。

バンドの一員としてフィッシュを遥かに凌駕するキャリアを経ているにもかかわらず、
いまだにマトモに認識されていないホガース。そしてホガース期MARILLION。


そんな長年の存在感の薄さを、どうかこのアルバムで払拭してほしい…!

昨年の新譜はそう切に願わずにはいられない傑作だったので
今回紹介させていただきます。



スティーヴ・ホガースが加入して3作目、
1994年に発表した7th『BRAVE』はロック史上に残る名盤でした。
(いかに素晴らしいかは6年ちょい前に書きました


ここで究極の「陰のドラマ」を描いたMARILLIONは、以降、
『AFRAID OF SUNLIGHT』 『THIS STRANGE ENGINE』 『RADIATION』
『MARILLION.COM』 『ANORAKNOPHOBIA』と、
より穏やかで内省的な、ぶっちゃけ割と地味な作品をリリース。


続く2004年の『MARBLES』では、
猛烈にダークな"The Invisible Man"を筆頭として
再び鬱エネルギー溢れる世界観を披露。これは名作でしたね。


で、その後は『Somewhere Else』 『HAPPINESS IS THE ROAD』
アコースティックリメイク盤『LESS IS MORE』と、
ますます大人のロック的な路線を継続。


そのあたりのアルバムも個人的には大好きだし、クオリティ半端ないので
文句の付けようが無かったんですが、
あまりに横綱相撲すぎて刺激が足りなかったのも事実であります。



そんな中、昨年発売されたのが
この17th『SOUNDS THAT CAN'T BE MADE』。


これがまさかの「MARILLIONお家芸・陰鬱ドラマ再び!」な、凄まじい内容。

ここまで気合の入ったアルバムを出してくるとは正直予想してなかった。


何と言っても1曲目の"Gaza"に尽きます。
MARILLION史上最長となる17分半の長さをもつこの曲。本当に素晴らしい。


イントロの硬質な感触からホガースのVoが入ってくる時点で
(これはヤバい…!)となり、鬼気迫る歌唱によって紡がれる緊張感満載の曲展開、
そして終盤のスティーヴ・ロザリー先生による泣きまくりの慟哭ギターワーク。


"Gaza"というタイトルの通り、パレスチナのガザ地区における難民キャンプと
そこで暮らす人々、子どもたちを描いた曲。

当然ながら相当にヘヴィな内容なんですが、
これはぜひ歌詞を読みながら聴いてもらいたい。


NGO支援活動を通して実際に現地の人々と交流したホガースが、
恐怖と悲しみと絶望、そしてほぼ祈りに近い希望とを
限りなく彼らに寄り添った視点で描いています。


感傷を湛えながらも過剰なセンチメンタリズムに陥ること無く、
それでいて決して傍観者とはならない、絶妙な立ち位置からの語り手。


まさにスティーヴ・ホガースの真骨頂と言える世界観に、
完全にマッチした表情を付加していく演奏陣。


特に終盤は圧巻。


"I can't know what twist of history did this to me. It's like a nightmare..."
という諦念、そして
"Someday surely someone must help us..."
という希望。

この相反する2つのフレーズがシンクロして歌われる部分は鳥肌モノです。


途中の歌詞にもあるように"Nothing's ever simple"な現実を踏まえつつ、
結末を安易な悲劇として終わらせはせず「希望」の要素を含ませる…。


『BRAVE』における"The Great Escape"〜"Made Again"の流れを
彷彿とさせる展開は、聴けば聴くほど心動かされます。


そしてその「希望」も単純な希望では無く、手の届かない希望だからこそ
悲劇性を増す効果を持っているとも捉えられるし、

上記"Someday〜"の直前の歌詞が
"With the love of our family, we can rise above anything."
であることからもそれは言える。


絶望的な境遇に立つ人にとって、現実的な「希望」「信頼」を見出だせる対象は
自らの「家族」にしか無い…。


…という、これだけで名盤確定の1曲目。


もちろん他にも、ロザリーのギターが泣きまくる"Sounds That Can't Be Made"、
本作におけるもう一つのドラマとなる14分の"Montréal"、
前作までの流れを汲んだメロディが美しい"Pour My Love"や"Lucky Man"、
穏やかな盛り上がりが感動を呼ぶラストの"The Sky Above the Rain"等、
捨て曲一切無しの傑作。



あとこのアルバムを聴いて改めて感じたのが、
マーク・ケリー(Key)の音使いの巧者っぷり。

一体どうやったらこんな多種多様の音色思いつくんだ…と思わせると同時に、
この場所にはこの音しか無い!ってのをさりげなく入れてくるのがたまりませぬ。

サウンドメイキングがここまで巧い鍵盤奏者はなかなかいないのでは。
ぜひバックの音にも注目してみてください。



ということで本作、昨年聴いたアルバムの中ではダントツで感動した。
歴代MARILLIONアルバムの中でも『BRAVE』に次ぐ名作だと思います。



どういう経緯か知らないけど14年ぶりに日本盤が発売されたってこともあるので、
来日を祈願するとともにいろんな人に聴いてみてもらいたい。


そんな風に「誰かにこの良さを伝えたい!」と思わせてくれるような作品だってのが
一番のポイントですかね。



最後にこのアルバムを聴く時の環境として、
『BRAVE』のブックレットに書かれているフレーズを引用して締めとします。



Play it Loud with the lights off.


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