前衛とは何か

内省(紙ジャケット仕様)Introspezione
OPUS AVANTRA

曲名リスト
1. Introspezione
2. Les Plaisirs Sont Deux
3. La Marmellata
4. L'altalena
5. Monologo
6. Il Pavone
7. Ah... Douleur!
8. Delie'e
9. Oro
10. Rituale

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Avantgarde+Trad=Avantra

だそうです。


1974年に発表された本作は、数あるプログレガイド本やWebサイト等で
必ずと言っていいほど掲載され、
「イタリア史上に残る絶対必聴の名盤」として扱われている作品。

ご多分に漏れずおれもプログレかじり始めの頃に購入。


聴いた時の感想は…



(わ、わかんねえ…)


このアルバム、メタル上がりの人間には正直めちゃめちゃ難解だと思う。


おもいっきりノイズミュージックなピアノとSEだけで構成される1曲目、
ピアノ+管弦楽器とオペラチックな女性Voの歌唱+語りの2曲目、
幼稚園のお遊戯会的な合唱を導入として、フルートとVoの偏執的なユニゾンが
繰り返される3曲目…と、

いわゆる「プログレ」だと思って聴くとわけがわからない。


これはプログレっつーよりも完全にチェンバーミュージック、
室内楽の範疇に入る音楽である。


思いつきで例えるなら、J.A.シーザーがDEVIL DOLLに加入して
KING CRIMSONの『ISLANDS』をやっている、みたいな。

すさまじく前衛的。ぶっちゃけロックですら無いと思う。



そしてこのバンド、実は2008年にクラブチッタで来日公演を行なっている。
おれも観に行きました。

ライヴを観た感想は…


(わ、わかんねえ…)


どぎつい色のドレスを着て歌うVoのドネラ・デル・モナコ、
ところどころで語りを入れてくる、黒装束+仮面を着用した
怪しいおっさん(ミュージシャンじゃないらしい)、
踊る弦楽四重奏団…といった感じで、スタジオ盤に拍車をかけて難解な有様。

ライヴというより前衛アングラオペラを観ているような感覚だった。


(ああ、うん……な、なるほどね…)って感じ。



何がどう「イタリアの至宝」とされているのかはいまだに理解できてないんだが、
とりあえずインパクトが強烈なのは確か。



…で、おれはここまで何度か「前衛」という単語を使っている。

そして「前衛音楽」「前衛芸術」というフレーズはごく一般的な単語として
世の中に認知されてもいる。



この単語、聴く側にとっては非常に便利なことばだよね。


ザッパでもFANTOMASでもLIGHTNING BOLTでも非常階段でも
THE MARS VOLTAでも何でもいいんだけど、
カテゴライズしにくい音楽はとりあえず「前衛的」「アヴァンギャルド」って
言っておけば間違いないみたいなとこある。



そしてたぶん、音楽を演る側にとっても、これは便利な単語だと思う。


「ジャンルに縛られない」ことを信条とし、他者との差別化を図るバンドにとって、
「前衛音楽」「アヴァンギャルドミュージック」というカテゴライズは
最も受け入れやすいジャンル分けだろうな、と。



だがそれは本当に「前衛的」だと言えるのか?



いわゆる脱構築的な言い方をするならば、
「前衛」というカテゴライズをされた瞬間にそれは前衛では無くなるし、
さらに「前衛音楽」ということばに対して多くの人が
「それがどんな音楽か」をなんとなくイメージできてしまう時点で、
「前衛音楽」というジャンルの前衛性・革新性は消え失せてしまっている。


※このあたり、「プログレ」というジャンルに求められるのは
実はプログレッシヴすることでは無い、という事象との類似性を想起させるが、
それはまた少し別のお話。



既存の型からの脱却を目指し「前衛的」であることを求めた結果、
「前衛」になった瞬間にそれは前衛でなくなる…。


ある意味悲しいジレンマだが、
あらゆる創作物は模倣により生まれるという原理原則の上に立つならば、
「真の意味での前衛は存在しない」というのは至って自明の結論とも言える。


重音激音界において最も「前衛的」と認識されている
ノイズミュージックにしても、いまや体系化されたジャンルと言っていいと思う。
言ってしまえばそれは"ノイズを出す"、という一ジャンルなのだから。


数年前に英国旅行に行った際、とある美術館で
「The History of Noise Music」という書籍を見つけたことがあるが、
そういう風に整理される対象になっている時点で、
体系に組み込まれているのは明らかではないだろうか。



では、この如何ともし難い矛盾から逃れるにはどうすればいいのか。

先鋭化をひたすら突き進めれば
果たして「前衛」が持つジレンマから脱却できるのか?

あるいはどこまでいっても矛盾にとらわれたままなのか?


その意味で、逆転の発想、すなわち「アヴァンギャルド」の対極にあり、
ゴリゴリの保守性を感じさせる"Trad"という単語をあえて組み合わせた上で
バンド名に冠したOPUS AVANTRAは一つの解だと言えるかもしれない。



そんなことを考えながら聴いてみるのもまた一興。


…と思って改めてアルバム聴き返してみたが、


やっぱりわかんねえ……


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